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東京高等裁判所 昭和51年(行コ)92号 判決

控訴人 北海自動車株式会社

被控訴人 葛飾税務署長

訴訟代理人 持本健司 佐々木宏中 ほか二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実〈省略〉

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は次のとおり附加するほか原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決一二枚目表一〇行目に「被告の主張1の(二)の(1)、(3)の事実」とある次に「及び控訴人が大高建設の委託を受けて大高建設の債務を保証した事実」を加える。

二  同一二枚目裏四行目に「原告が」とある前に、「法人の有する売掛金、貸付金その他の債権(以下「貸金等」という。)が現実に貸倒れとなつた場合、それは貸倒損失として損金に算入されるのであるが、貸金等が現実に消滅したわけでもなく、その貸金等の全部が明らかに回収不能であるとも認められない場合においても、その相当部分について回収の見込みがないと認められる等の場合に、一定の要件に該当するときは、その貸金等のうち一定の金額を当該年度内において損金経理により債権償却特別勘定に繰り入れることができることとし、実質上部分的な貸倒損失を認める取扱がされており(直審(法)25(例規)昭和四四年五月一日法人税法基本通達9-6-4.5等参照)、かかる取扱は貸金等の貸倒れの認定に困難を伴うことに照らして合理的な取扱として是認すべきであるとしても、このような貸倒処理は、現実に発生した実質的かつ確定的な貸金等についてのみこれをすることができるものであり、実質的な貸金等として確定的に成立していないものについて右のような処理をすることまで許されるとするものでないことは明らかである。本件において、」を加える。

三  同一四枚目表一行目から二行目にかけて 「余地はないというべきである。」とある次に「(保証債務は、法律上は一個の債務として発生しているものではあるが、現実にその支払を余儀なくされるかどうかは未確定なものであるため、会計処理上はいわゆる偶発債務、すなわち、現実に発生していない債務で、将来において当該事業の負債となる可能性のあるもの(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則取扱要領第一三一参照)として、現在確定的には負債性を帯有していないものとして取り扱われており、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第五八条も、これを金額欄には表示せず、脚注に示すべきであるとする趣旨で、偶発債務は貸借対照表に注記しなければならないと規定しているのである。そして保証債務は、前述のような不確定性をもつと同時に、他方その覆行によつて主債務者に対する求償債権を発生せしめるという特殊性を有するものの右求償権の発生自体は保証債務の覆行を条件とする関係上、一般に保証債務を会計帳簿に仕訳する場合には「(借方)保証債務見返何円、(貸方)保証債務同円」と記載すべきものとされ、この両勘定は共同して保証債務の存在を表現し、両勘定は同時に発生し、同時に消滅し、常に相対照するとされ(このため両勘定を対照勘定という。)、保証人が保証債務の覆行をした場合にはじめてその弁済金額につき借方に末収金勘定として、他方これに対応する貸方に現金(または預金)

勘定としてこれを記載すべきものとされ、保証人が末だ免責行為をしていない保証債務につき相手勘定に資産勘定である貸付金勘定を計上するような会計処理は認められていないのである。上に述べたことは、たとえ債権者が保証人に対して保証債務の覆行を迫り、権利実行のための措置をとるようなことがあつても、その妥当性を失うものではなく、また、保証人が保証債務の覆行のために約束手形を振り出し、債権者に交付したとしても、その支払がなされるか、または支払があつたと同視すべき事実が発生しない限り、同様である。企業会計原則上の発生主義は叙上に反する控訴人の主張を根拠づけるものではなく、控訴人の主張は、被控訴人のいうごとく、ひつきよう独自の見解に基づくものであつて、採用できない。)」を加える。

以上の次第で、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 中村治朗 高木積夫 蕪山厳)

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